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Seminar

第13回デザイン基礎学セミナー『写真とデザインが交差するところ』

2020年6月3日(水)

九州大学大学院芸術工学研究院は、デザインの体系化を目的としデザイン学の基礎論に取り組んでいます。この度,第13回デザイン基礎学セミナー「写真とデザインが交差するところ」と題し,本学講師のメディア研究者増田展大氏と,同じく本学助教の芸術家栗山斉氏による対談型のオンライン・セミナーを開催しました。両氏に写真とデザインについて領域横断的に理論と実践を交えて議論していただきました。当日の模様を,本学芸術工学研究院古賀徹教授が振り返ります。

 

写真とは現物をありのままに写す証明である。古写本を高解像度でスキャンした映像ファイルはもはや現物と変わるところがないし、犯行現場のビデオ映像や静止画像は犯罪の決定的な証拠になる。写真は現実を確認し、より確かなものにする。

だが、メディア論者の増田展大さんによれば、そうした証明写真は現実を同時に虚体化してもいるという。写真は現実からその現実性を奪い、それを見慣れぬものにするのだ。

増田さんは、美術家の栗山斉さんの作品、 ∴0=1 -medium: blue snowfield (2010) を例にそれを説明する。栗山さんによれば、この作品は、地球観測衛星によって700kmの上空から撮影された映像で、大気中の光の散乱によって雪原が青く染まった様子を映し出している。われわれが白いと思い込んでいる雪原には宇宙の色が映り込んでいて、「青い地球は宇宙と地続き」なのである。

同様に栗山さんの作品、∴ 0=1 -trace of light (2009)は、過電流によってヒューズが飛ぶ光が直接印画紙に焼き付けられた作品である。あるものがないものへと変化する中間点、つまり0=1が成り立つ移行の極点において現象が生起する。これら栗山さんの一連の写真作品は、ものの生死の瞬間を証言すると同時に、そうした瞬間においてのみ、ものごとが成り立っていることを証明するものでもある。

こうした「証明写真」を見るとき、ひとははっとして、何かに気づく。増田さんは現実を差異化するこうした写真のありかたを、多木浩二の言葉を借りて「模型」と呼ぶ。模型もまた、現実の正確な似姿を示すことで、現実を確認する作用を果たしていると思われている。だが模型もまた、世界に対する見方を決定的に変えてしまう。

建築家はなにゆえに現実のモックアップ模型を作るのだろうか。それは自らの設計を現物で確認するためではない。むしろそれは、現実のスケールを変化させ、そこに自らの設計物を配置することで、世界に対する新しい見方と自らの制作物の新しい意味を同時に獲得しようとしているのだ。

20世紀のメディア論者のフルッサーは、新しい現実の姿を与える操作を指して、 in-form と言ったと増田さんは言う。information とは、既存のものから〈かたち〉を奪い、それに新しい〈かたち〉を刻みつけることである。だとすればデザインとはそうした in-formation のたえざる操作ということになるだろう。

運転免許試験場で、住所と氏名を確認して下さいと警察官に言われても、まずはひとが見るのは自分の写真だという。証明写真を確認することは、いつもの自分をそこに再認するのではなく、免許証という枠組みに組み込まれた自分の新たな姿を発見することでもある。それは一種の劇場であり、そこでは自分が劇を演じている。演劇をみることには、いつも喜びがあふれている。

 

[登壇者]

増田展大 Nobuhiro MASUDA

写真史・映像メディア論研究。九州大学大学院芸術工学研究院講師。写真史を起点として、科学やアートを横断するイメージについての考察を進める。著書に『科学者の網膜 身体をめぐる映像技術論:1880-1910』(青弓社、2017年)など。

栗山斉 Hitoshi KURIYAMA

美術家。九州大学大学院芸術工学研究院助教。作品制作を通じて「無」と「存在」の同等性について探求している。主な活動に「第54回ヴェネチアビエンナーレ collateral event Glasstress」ムラーノ島旧ガラス工場(ベニス、イタリア)、「What Dwells Inside」S12 Galleri og Verksted(ベルゲン、ノルウェー)などがある。

増田展大 氏
栗山斉 氏
古賀徹 教授

日時

2020年6月3日(水)16:30-18:30

場所

オンライン

お問い合わせ

デザイン基礎学セミナー事務局 古賀 徹 (九州大学大学院芸術工学研究院)

designfudamentalseminar@gmail.com

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1

QSランキング2017-2020(Art & Design分野)アジア地域・日本の大学 4年連続1位

44

共同研究受託数 44件

20

留学生数の割合 20%