九州大学大学院芸術工学研究院では、デザインの体系化を目的とし、デザイン学の基礎論に取り組んでいます。
デザイン教育はいま、いかにあるべきか。デザイン基礎学セミナー第1回目のゲストとして、京都大学の山内裕氏をお迎えして、サービスデザインのうちに内在する文化や教育の契機について議論を行いました。
山内氏によれば、サービスというのはたんに奴隷のように顧客に奉仕するだけでは不十分で、顧客の知性や感性を凌駕する地点から顧客に挑戦する必要があるといいます。それによって顧客は、自らが知らない世界へと開かれ、いうなれば試され、教育される。サービスの提供者であるデザイナーとそれを享受する顧客との共創のうちに価値が生まれる。
このことを山内氏は、ヘーゲルの「主人と奴隷の弁証法」ならびにフッサール現象学の「相互主観性」などの概念を用いて説明しました。山内氏の言葉では、サービスとは「闘争」なのです。
これに対して、デザイナーのエリート主義を問題視する田村大氏が「文化のデザイン」という観点から様々に問題提起をしました。
デザインを教育するというよりは、デザインそのものの中に教育の契機がある。刺激的な議論の場となりました。
[日時] 2018年5月1日(火) 午後3時から5時まで
[場所] 九州大学大橋キャンパス 管理棟4階 大会議室
[登壇者]
山内 裕(やまうち ゆたか)
京都大学経営管理大学院准教授。経済学部・経済学研究科、およびデザインスクールにて兼務。1998年京都大学工学部情報工学卒業、2000年京都大学情報学修士、2006年UCLA Anderson Schoolにて経営学博士(Ph.D. in Management)。Xerox Palo Alto Research Center研究員を経て、京都大学経営管理大学院に講師として着任。2015年4月より現職。シンガポール南洋理工大学 Institute on Asian Consumer Insightフェロー、コペンハーゲンビジネススクール Department of Management, Politics and Philosophy Visiting Professor、サービス学会理事。
田村 大(たむら・ひろし)
株式会社リ・パブリック共同代表。東京大学i.school共同創設者エグゼクティブフェロー。九州大学客員教授、北陸先端科学技術大学院大学客員教授を兼任する。デザイン思考のパイオニアとして知られ、現在は、国内外の産学官民を結んだ数々のオープンイノベーションのプロジェクトを企画・運営し、新たな「イノベーション生態系」のあり方を模索する。主な共著に「東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた」(早川書房)。
[お問合せ] 古賀 徹(九州大学芸術工学研究院) toru(a)design.kyushu-u.ac.jp
日時
2018年5月1日(火) 午後3時から5時まで