九州大学大学院芸術工学研究院は、福津市と行政デザインの共同研究に取り組んでいます。福津市子育て世代包括支援センターと共に、行政サービスの一つである子育て支援を取り上げ、デザインの手法を使って子育て市民と行政職員が共創しながら、子育てをする保護者の気持ちに寄り添う「福津市こどもの国 子育てサービスマップ」を開発しました。このサービスマップは、2021年キッズデザイン賞を受賞しました。
「福津市こどもの国 子育てサービスマップ」は、初めて子育てする保護者のためのツールです。 初めての妊娠・子育ては知らないことだらけです。子どもや子育てに関する多くの行政サービスがありますが、利用者はどうアクションしていいかわかりません。そこで九州大学、アールト大学と福津市が協力して、市民と共に利用者に寄り添うサービスマップをデザインしました。
子育ては楽しいことばかりではありません。「些細な問題で相談して良いかわからない…」、「子どもに手をあげそうになった時にどうすれば良いの?」など保護者は大小様々な悩みを抱えていますが、子育ての悩みを行政にどこまで相談して良いか、誰を頼れば良いかわからないという課題がありました。一方、子育て支援を提供する行政職員は、「行政全体でどんな子育て支援があるか、自分の担当以外の事がわからない」という課題がありました。
そこで、子育て支援の利用者、提供者双方の課題を解決するために参加型デザインワークショップを実施し、様々な関係者から情報を集約しました。このサービスマップの独自性は、理想の子育てではなく、当事者の悩みに寄り添ったガイドマップとしてデザインした点にあります。「子どもの年齢でサービスを見つける子育てジャーニー」「典型的な家族像を描かないグラフィック」「些細な相談の具体例」「相談者の顔が見える名前シール」等、当事者の声をデザインに反映しました。
「福津市こどもの国 子育てサービスマップ」は、年間約一万部を発行し、福津市内で出生する全ての方へ母子健康手帳と共に配布します。配布時は担当保健師や助産師などの専門職がサービスマップの見方やサービスの利用方法を説明しながら手渡します。その際に、担当者の名前シールをサービスマップに貼り、相談者の名前と顔が見えるコミュニケーションをデザインしました。
このサービスマップは、公共施設をはじめ、図書館や地域の子育てサロン、公民館、駅やショッピングモールなどで入手可能です。また、福津市公式ウェブサイトからダウンロードもできます。サービス利用者だけでなく、提供者である行政職員にも子育てサービスの包括的な理解を促すため、総合窓口に設置しています。
このサービスマップにあるように全国の多くの自治体で同様のサービスが提供されています。今回デザインしたサービスマップの手法を使って、他の自治体へ展開することも可能ですので、ご興味のある方はお問い合わせ先までご連絡ください。
ディレクション:平井康之(九州大学大学院芸術工学研究院)
企画・制作・編集:下村萌(九州大学大学院芸術工学研究院)、福津市子育て世代包括支援センター
企画・研究指導・ワークショップ運営:カリハンス・コッモネン(アールト大学)
制作協力:中島梨沙(株式会社スカイ)、甲斐美希子、土肥真維華(九州大学大学院芸術工学府)
デザイン:平野由記(ウフラボ)
ワークショップ協力:福津市役所、福津市民
日時
2021年8月25日
お問い合わせ
九州大学大学院芸術工学研究院 下村 萌
電話: 092-553-4652
メールアドレス: shimomur@design.kyushu-u.ac.jp