デザイン哲学Bar「プロボケバー」は、国内外の第一線で活躍する教授、デザイナー、編集者からの挑発的な問いに対して、お酒を片手に会場のみなさんとともに考える場です。武蔵野美術大学基礎デザイン学科と九州大学大学院芸術工学研究院が共催し、全6回開催しました。
デザイン基礎論連続シンポジウム・Provoke Bar(プロボケバー)は、デザインはいかなる条件で成立するのか、それは学といえるのか、その目的はどこにあるのかといった根本的な問題に関して、造形・記号・意味・方法・価値などのさまざまな論点から鋭い問題提起をなすシリーズとなりました。
毎回多くの入場者を得て、時間の不足を痛感するほどに議論も活発になされました。全体のシリーズを通じて私が感じたのは、こうした問題を徹底的に議論する場所がこれまでほとんど存在しなかった、という感慨でした。
様々に印象深い問題提起がなされました。そのうちの一つとして、自然からの圧力に対して生命から反発する力が生まれ、両者が均衡するときにかたちが定まる、という議論がありました。自然に対する生物的適応の結果として生物の身体のかたちが定まる。しかも人間はそうした生物的適応に加えて文化的にも適応する。これこそがアート、すなわち技術としての造形なのだ、というのです。
こうした議論は、何をどのようにデザインしようかと悩んでいる人たちに実践的指針を与えるものではありません。またデザインの新潮流についての知見を得ようとする人にも満足を与えることはないでしょう。
しかしながらそれでも、デザイナーの方々が数多く参加した会場は熱気に満ちていました。おそらくそうした議論は、たとえ何かを立証することはなくとも、ものごとを見る新たな視点を与えてくれるのだと思われます。そういう見方があるかもしれないというその可能性に対して、世界や人間は新たな姿をとって現れます。そのかぎりで、真偽不明のその議論は「生産性」をもつのです。
哲学とはそのような試みです。ものごとの根底を疑い、それはこうかもしれないという立証しようのない議論を提起して、あたらしい意味とかたちを呼び起こす。こうした哲学の営みがデザインと結びつくとき、そこに豊かな可能性が息づくのだと思います。全6回のシリーズはそうした豊饒さを十分に感じさせるものになりました。
来場していただいた多くの方々、企画を支えて下さった多くの関係者の方々にお礼申し上げます。
古賀 徹
芸術工学50周年記念事業
デザイン基礎論連続シンポジウム・デザイン哲学Bar「プロボケバー」
第1回
7/27(金) 19:00-21:30
会場:紺屋2023
タイトル:デザインが存立するとき
プロヴォケーター:板東 孝明、伊原 久裕
コーディネーター:古賀 徹
第2回
8/3(金) 19:00-21:30
会場:サンボン
タイトル:デザインの実践にとって基礎は不要(か)
プロヴォケーター:川浪 寛朗、山内 泰
コーディネーター:下村 萌
第3回
8/17(金) 19:00-21:30
会場:紺屋2023
タイトル:デザインを教えることはできるのか
プロヴォケーター:シン・ヒーキョン、小林 昭世
コーディネーター:池田 美奈子
第4回
8/30(木) 19:00-21:30
会場:紺屋2023
タイトル:終わらない編集としてのデザイニング
プロヴォケーター:藤崎 圭一郎、池田 美奈子
コーディネーター:古賀 徹
第5回
8/31(金) 19:00-21:30
会場:紺屋2023
タイトル:変動する意味としてのデザイン
プロヴォケーター:小林 昭世、古賀 徹
コーディネーター:伊原 久裕
第6回 最終回
9/7(金) 19:00-21:30
会場:冷泉荘
タイトル:デザインのヒューマニズム2.0
プロヴォケーター:池田 美奈子、伊原 久裕、古賀 徹
[共催]九州大学大学院芸術工学研究院、武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科
[協賛]九州大学未来デザイン学センター
[協力]NPO法人ドネルモ、紺屋2023
[お問い合わせ]九州大学大学院芸術工学研究院 古賀 徹 Tel: 092-553-4400
日時
2018年7月〜9月
Member
- 板東 孝明 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科
- 川浪 寛朗 株式会社日本デザインセンター
- 山内 泰 NPO法人ドネルモ
- シン・ヒーキョン 韓国世明大学デザイン学部
- 小林 昭世 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科
- 藤崎 圭一郎 東京藝術大学美術学部
- 紫尾 陽子 九州大学大学院芸術工学研究院