2021.4.5

第9回セミナー『密室を解放するデザインー境界を超える社会・空間・生活・思想を求めてー』

近代以降、特に20世紀以降はある意味生活空間、社会空間の密室化が進んだ時代であった。個人の権利が守られ、境界が設けられ、人々はコンクリートといった近代の建材によって区切られた空間に生まれ育ち、生活をするようになった。それは同時に社会構造や思想、地域デザイン、家屋のデザインにも表現されている。ここではそれを「密室化」と呼ぶ。「密室化」は学問的アプローチにも見られ、全人格的知恵や思想よりもより専門化し、区切られた思考が重んじられるようになった。家庭も、学校も、それぞれ空間的にも社会的にも密室化し、そこに新たな暴力や閉そく性が生み出されている。21世紀はこの20世紀の閉そくを脱するために、「密室の開放」を求める時代であるべきだと考えている。開かれた空間、開かれた社会、偶発的な出会いやコミュニケーションによって即興的に構成される世界。これが生命系をより豊かにし、自らの閉そく性を打破するために人類が獲得すべき方向性なのではないか。それを筆者が長年のフィールドとして通ってきた中国内陸部の黄土高原の村を一つのモデルに描いてみたい。

招聘講師

  • 深尾 葉子(大阪大学大学院言語文化研究科・言語社会専攻教授)

参照URL (日本語・英語ページあり)