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第3回デザインセミナーNEXT『「起点を持たない音楽」から生まれる音の振る舞い – Don’t DJ/YPY Yukemuri Gokudo tsua 2019』を開催しました

2019年10月28日

2019年10月28日に、ベルリン在住の音楽家であり、かつて本学芸術工学部の留学生でもあったDON’T DJと、バンドgoatとbonanzasのプレイヤー兼コンポーザーの日野浩志郎によるソロプロジェクトであるYPYをゲストに迎え、第3回デザインセミナーNEXT「起点を持たない音楽」から生まれる音の振る舞い – Don’t DJ/YPY Yukemuri Gokudo tsua 2019が、本学大橋キャンパス音響特殊棟スタジオで開催されました。
当日は、紙やアクリルで作られた自作のレコードを用いた城(本学教員)、膨大な量のカセットテープとマルチトラックのテープレコーダー3台とを駆使したYPY、様々なオブジェクト(e.g., 輪ゴム, CD)によって楽器化されたターンテーブルとコンピュータから奏でられる音とを組み合わせたDon’t DJ、という3名の演奏の後に、城を聞き手として、今回のタイトルでもある「起点を持たない音楽」の意味や各々の演奏の構成、使っている機材の解説など一般的なライブパフォーマンスやトークイベントではなかなか聞くことの出来ない様々な話題が繰り広げられました。
実践に基づくデザインの新たな可能性を探ることを目的とした、実際の演奏をふまえた当事者たちによる今回の対話には、およそ50名ほどの学内外の来場者からも様々な意見が寄せられました。以下その中から、当日の準備、本番、片付けまでをサポートしてくれた本学学生4名によるレビューをお届けします。

 

横川十帆(修士2年)
デザインというキーワードを冠していながら、デザイナーという枠には収まりきらないゲストの話を聞くことができる場がデザインセミナーNEXTだと認識している。今回は「起点を持たない音楽」をテーマにアーティストによるパフォーマンスを体験することができた。演奏を聴きながら、ゲストのDONT’DJとYPYは両者ともアーティストでありながら、オルタナティブな音楽のシステムを設計するデザイナーとも呼べるのかもしれないと感じた。ゲストによるトークもこのイベントの厚みを増す重要な要素だ。学外との接点を持ちづらい学生のひとりである自分にとって今回のイベントは、アーティストの考えやバックグラウンドを直接アーティストの口から聞くことができるだけでなく、こんな生き方をしている人もいるんだと知ることができる点で、ある種精神的に健康になる体験だった。その点で、今回は特にトーク/ディスカッションの時間がもう少し長ければと感じた。ゲストお二人の関係について深くお聞きしたかった。デザインセミナーNEXTは視野を広げることのできる機会としてとてもありがたいと思う一方、学部生のころにこういった貴重な機会をもっと有効に使えていたらとも感じている。今後もサポートすることがあれば、少しでも多くの学生が参加しやすい場にできればと思う。

 

イ・スンギュ(研究生)
タイトルが難しい感じでしたが、直接見て聞いてみたら理解できました。確かに音楽の中に閉じこもっていない感じがして、聞きこんでいくほど楽しむことができました。個人的にドラムビートを作るのが好きなので、ビートが生み出されていく様が心地良かったです。それぞれの音楽の奏で方のアプローチが独特で、そこから生まれる音楽もかなりユニークでした。セッティングからも音楽からもアーティストの個性が強く感じられました。近くで見られたことも良かったです。欲を言えば、ゲストと対話しながら、もしくは事前に、セッティングの説明を聞けたらなお良かったなと思います。もっと日本語のリスニング能力を高めたいと思えた、いい機会でした。
中内春一郎(学部4年)
音楽というものを考えたときに、リズムがあって旋律があるものを想起すると思います。歌詞や調性、ビートというひとつながりのコンテキストがあり、それを一つの音楽の作品として演奏し、聴取されます。アンビエント的な音楽とも異なりそこには確かに聴衆は演奏家と対面して二元的な関係がはっきりしています。起点を持たないとは、旋律やビートの起点がないように僕からは感じられました。拍子を感じる時には1,2,3,4/1,2,3,4…というように1という起点が生じるはずなのですが複数のリズムが重なり合い起点が曖昧になるのです。実際に聞いてみないとわからないかもしれませんが。
トークセッションにおいて、アーティストからの答え合わせがあるというところも特筆すべきことでした。カセットやレコード、PCJなど様々なスタイルから共通の何かを感じることができました。トークを聞いた上で更に音楽を聞くという場があればよかったかもしれないです。

 

 

西田騎夕(学部4年)
芸工でこんなイベントできるんだ〜という第一印象だった。個人的にも普通は内容なアプローチから音を作る試みは好きだし、すごく見てて楽しかった。このようなイベントの中にも対談の時間を設けることで、そのアーティストが実際にやっていることを様々なことを絡めながら確かめていく試みは良かったと思う。対談の時間をもっと長くしても全然いいと思った。色々な話が出てきそう。また自分もやってみたくなった。ドイツに留学していた時は1ヶ月に1回はこのようなイベントがあって、学生がアーティストと同じ目線で実験的に色いろな音楽の可能性を探っていた。また学生がアーティストを呼んでくるということもあった。そういうのはみていて楽しかったし、とにかくインプットにつながって、自分もこれやってみたい!と思うことが多々あった。そういうような場所が芸工にも作れるのでは?と思った。

 

登壇者

Don’t DJ
ユークリッドリズムに基づいたポリリズム作品を通じて突出した存在感を放ち続けている個性派アーティスト。彼が”ムジーク・アキファーレ”と呼ぶ「起点を持たない音楽」は極めてミニマルに反復する複数のリズムパターンの組み合わせによって実現されている。執拗な(しかし、極上の)反復を聞き続けているうちに、ループの起点がどこにあるのか曖昧になっていくため、リスナーごとに異なるパターンが意識内で知覚されることになる。

YPY
日野浩志郎によるソロプロジェクト。「goat」、「bonanzas」というバンドのプレイヤー兼コンポーザーであり、クラシック楽器や電子音を融合させたハイブリッドな大編成プロジェクト「Virginal Variations」、多数のスピーカーや移動する演奏者を混じえた全身聴覚ライブ「GEIST(ガイスト)」の作曲、演出を行う他、カジワラトシオ、東野祥子によって設立されたANTIBODIES collectiveでの活動、太鼓芸能集団「鼓童」への作曲提供などを行う。

城 一裕
九州大学大学院芸術工学研究院准教授
Don't DJ 氏
YPY 氏
城 一裕准教授

日時

2019年10月28日開場17:30 終演21:00

場所

九州大学大橋キャンパス音響特殊棟

福岡市南区塩原4-9-1

お問い合わせ

九州大学大学院芸術工学研究院 城一裕

jo(a)design.kyushu-u.ac.jp

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