2019年より、九州大学大学院芸術工学研究院では、基礎論の枠に留まらない、デザインの新たな可能性を探ることを目的とし、『デザインセミナーNEXT』を立ち上げ、実践的な活動を行うこととなりました。デザインの体系化を目的とするデザイン基礎学セミナーとの二本柱で、新たな教育方法の確立に取り組んでいきたいと考えております。
この度、『デザインセミナーNEXT』の第1回目として、「耳の冒険家達へ -インド最古の録音から聞こえる音の世界-」を開催しました。
[概要]
アメリカ・シアトルを拠点に世界の知られざる音楽を発掘するレーベルSublime FrequencyのリサーチャーRobert Mills氏が日本における最初期の録音作品を調査するために来日しています。氏の専門は人類にとって最も古い録音メディアの一つであるSP盤。メディアとしてのSP盤、その録音方法や歴史、さらに録音技術自体が世界の文化をいかに形作ってきたかということへの知的好奇心から、氏はインドで本格的な調査を長期間に渡り行ってきました。今回は、氏がインドに初めて訪れた際に記録した貴重な映像作品『This World is Unreal Like A Snake in A Rope』を上映した後、氏と親交が深く、「ヒゲの未亡人」「ワッツタワーズ」などの音楽ユニットをはじめ多岐にわたる活動で知られるスタディストの岸野雄一氏を聞き手にお話を伺います。
[出演]
Robert Mills
Sun City GirlsのAlan Bishopらと共にSublime Frequenciesを運営する米リサーチ界の最重要人物。SP盤の研究や収集が専門領域で、再発レーベルDUST-TO-DIGITALにも楽曲を提供している。ミュージシャンとしてClimax Golden Twinsの活動のほか、職業作家として多数の映像作品に提供しており、ソロでも活動している。映像作家としてタイの奇祭ピーターコン祭りの様子を収めた『PHI TA KHON: GHOSTS OF ISAN』、南インドの伝統行事を記録した『THIS WORLD IS UNREAL LIKE A SNAKE IN A ROPE』など数々のドキュメンタリー作品を制作している。フルブライト研究員として一年間インドに滞在し、SP盤の調査と記録を行いまとめた『INDIAN TALKING MACHINE』や民俗音楽学者Deben Bhattacharyaの足跡を辿り、膨大な音源を収録した『PARIS TO CALCUTTA: MEN AND MUSIC ON THE DESERT ROAD』などの著作も発表している。日本には1902~03年に行われた東アジアの最初期の商業レコーディングについて調査するために来日した。
岸野 雄一
1963年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科、美学校等で教鞭をとる。「ヒゲの未亡人」「ワッツタワーズ」などの音楽ユニットをはじめとした多岐に渡る活動を包括する名称としてスタディスト(勉強家)を名乗る。銭湯やコンビニ、盆踊り会場でDJイベントを行うなど常に革新的な場を創出している。2015年、『正しい数の数え方』で第19回文化庁メディア芸術際エンターテインメント部門の大賞を受賞。2017年、さっぽろ雪まつり×札幌国際芸術祭2017「トット商店街」に芸術監督として参加。
[コーディネーター]
城 一裕 (九州大学大学院芸術工学研究院准教授)
主催
九州大学大学院芸術工学研究院
日時
2019年6月19日(水)開場18:00 終演21:00
お問い合わせ
九州大学大学院芸術工学研究院 城 一裕
jo(a)design.kyushu-u.ac.jp